『赤い悪魔の子守歌』関よしみ

■著者:関よしみ

■発行:1985年

■発売:講談社

■虫:クモ

王道少女漫画誌に登場した

昆虫パニックホラー

骨になるまで蜘蛛に食い尽くされるというパニックホラーが、あの『なかよし』で連載されていたんですよ!

小学生の頃読んでいた少女漫画誌『なかよし』(講談社)では、

この人の作品が楽しみで楽しみで。

関よしみといえば、幽霊やモンスターなどの”異形系”は少なく、人間がどんどん狂っていく話が特徴だろう。

学力を競い過ぎた挙句同級生の脳みそをぺちゃぺちゃ食べたり、一攫千金クイズのお題で眼球を破裂させられたり、

痛みを感じない女医がホームレスに激痛実感を施したりと、それはそれはグロくて痛い話ばかりなのだが、初期にあたる当時は昆虫パニックものなんか描いていたりも。

タイトルの「赤い悪魔」とは、人食い蜘蛛の事。刺されると毒が体にまわり眠ってしまうことから「子守歌」なのだろう。

肉食蜘蛛・ミドロチュラ(笑)と赤蜘蛛を掛け合わせて作った新種の蜘蛛が研究所から逃げだしてしまい、あっという間に大繁殖、

街がパニックになるというパニックものではお約束のパターンだ。

たたりじゃーと暴れまわるおばあちゃん、お金と名声が大好物な下種市長、そんなパパの権力を笠に着るいばりんぼ娘、正義感の強いヒロイン&生物学者の父親、そしてハンサムな同級生。パニック映画のお約束的キャラがキレイにそろっているので、ホラー好きとしてはなぜか安心感を覚えてしまう。現実的な生態の昆虫や、肉親や子供が食べられてしまう衝撃シーン、強欲市長の人間らしいお涙頂戴展開等々、かなりの読みごたえがある良作です。

ちなみに『漫画家誕生』(新潮社)に掲載されているインタビューによると、デビュー当時恋や友情といった少女マンガを描いていたのだが、次第に何を書いたらいいのかわからなくなり、切羽詰って恐怖ものを描いたところ予想外にウケてしまい、ホラー中心になっていったという。ホラーの神様に選ばれてしまったんですねえ。残念なことに、この後の作品には虫ホラーはほとんどないのだが、関センセイが1作でも虫話を描いてくれたというだけで、非常に嬉しい事です。

いやー、本当に映画化すればいいのに。

この記事を書いた人
ムシモアゼルギリコ

フリーライター歴20年(※虫関連の記事以外、基本は別名義)。
2008年頃から昆虫料理研究会(内山昭一主催)に参加し、“虫食いライター”としての活動を始める。
TV、ラジオ、雑誌、トークライブ等で昆虫食の魅力を広めているほか、映画やバラエティ番組などに登場する“虫食いシーン”の、調理サポート等も行う。

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