『ゴキちゃん』

■著者:須賀原洋行
■発行:2007年
■発売:講談社
■虫:ゴキブリ、カブトムシ、蛾、蜘蛛、その他

史上初!?
巨大ゴキブリVS昆虫料理愛好家

『モーニング』(講談社)連載の『気分は形而上』でおなじみの須賀原洋行による、ゴキブリ漫画『ゴキちゃん』。

主人公は小学生のケンタ君。お小遣いで買ってきた巨大ゴキブリ・ゴキちゃん(どこで売ってるんだ?)と暮らすスリリングな毎日を描ギャグ漫画だ。スリルを感じているのは、主にお母さんだけど。

人間サイズ&知能のウサギと暮らすギャグ漫画『パンク・ポンク』で育った世代としては“ペットと兄弟みたいに暮らせたら楽しいよね”というこの設定に懐かしさを感じるが、そういえば『パンクポンク』にもゴキブリーヌちゃんっていましたね。

ゴキちゃん同様に、ゴキブリーヌちゃんのセリフは「ゴキ~!」「ゴキキ」。

鳴かない昆虫は、種名で会話するというのがお約束なのでしょうか…。

ちなみに『ゴキちゃん』に登場する巨大蜘蛛「クモちゃん」のセリフはいつでも「クモモー」。蟻は「アリリー」。些細な非実在昆虫描写が、バッカバカしくて大変楽しい。

『ゴキちゃん』では、「ゴキブリはレモンの香りが嫌い」「退治するときはつぶさない。雌だとつぶされたショックで出産する場合があり、かえって数が増えるから」等々、実用的な情報もたっぷり紹介される。しかし実はそんな事はどうでもよくて、特筆すべきは昆虫料理愛好家が登場することだ。

ある日ゴキちゃんが誘拐されてしまう。その犯人は、世界の昆虫を食べ歩いているという昆虫料理愛好家「虫賀田部太蔵」だった。ゴキちゃんが活躍したニュースを見て、「人間と同じように生活をしてるゴキブリがいる!? それは栄養たっぷりで美味しいに違いない!」と、食材=ゴキちゃん捕獲に情熱を傾けるのだ。

はい。虫賀氏のおっしゃることはごもっともです。しかも虫賀氏は「一番うまいのはマダガスカルゴキブリのフライだったが…」と語る。

昆虫料理愛好家の皆さん、激しく同意できますよね!

害虫駆除情報や登場する虫の生態描写、そして昆虫の味! 子供に間違った知識を植え付けない、とても丁寧な虫漫画です。

様々な料理のひとつとして昆虫料理を取り上げている漫画は少なくないが、昆虫料理愛好家が登場する漫画は『ゴキちゃん』だけ。(※注:取材・体験系のルポマンガには、数えきれないほど昆虫料理研究家・内山昭一が登場しております)。昆虫料理好きなら、『ゴキちゃん』を見逃すな! 見逃しても大損はしませんが。

この記事を書いた人
ムシモアゼルギリコ

フリーライター歴20年(※虫関連の記事以外、基本は別名義)。
2008年頃から昆虫料理研究会(内山昭一主催)に参加し、“虫食いライター”としての活動を始める。
TV、ラジオ、雑誌、トークライブ等で昆虫食の魅力を広めているほか、映画やバラエティ番組などに登場する“虫食いシーン”の、調理サポート等も行う。

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