小説、絵本その他虫カルチャーレビュー

『でんせつのきょだいあんまんをはこべ』

■著者:サトシン(作)、よしながこうたく(絵)
■発行:2011年
■発売:講談社
■虫:蟻

ガチムチアリジェクトX!
こうしてオスたちの戦いは終わった

「あんまん」をまるごと運ぶ……。

不可能と思える挑戦に、いのちをかけて挑んだ、アリたちの知力と努力の物語!

以上、カバー見返しに掲載されている本書の紹介文だ。

つまり「蟻さんがあんまんを運びました」。はい。それだけのお話です。

いや、そんなことを言いだしたら絵本はたいてい「それだけ」なんですけどね。
「夜更かしすると猫目のお化けが出るだけの話(ねないこだれだ)」

「生き物は全て排泄機能を備えているというだけの話(みんなうんち)」。

そのシンプルな出来事に何を感じるかが大切であるわけで。

うん、大切なんだけど・・・なんだけど・・・絵が濃厚過ぎて、思考が止まりそうです!!!!

ガチムチアントー!

アリなのか鬼なのかクリーチャーなのか、もはや謎。

※そういえば『テラフォーマーズ』という漫画の進化ゴキブリも(単行本は4月に発売のハズ)、確かこんなんだった。

この世界の蟻のあいだで、アンマンは伝説の食べ物だそうだ。

それが空から降ってきたのだから(訳:通行人が落とした)、「おおおおおお!」とテンションマックスにもなるのも当然。

しかし、長老&女王の意見により「そのままの姿で運ぶ」というミッションインポッシブルに! アリジェクトXの始まりです。

アリたちは暑苦しく奮闘する。
アリレオ・アリレイも大活躍。

「えだをあつめるもの、それをたばねるもの、(中略)、りょうりをつくるもの」。

刃牙(バキ)のようなガチムチアリが設計図を片手に何かを叫んでいる後ろで、
芋虫的なものを輪切りにしている調理風景がちょっと美味しそうだ。

ところで虫屋の方々は既にお気づきでしょうが、「こんなメスありかよ!」。

そうです。蜂と同じシステムで、蟻の労働係は本来全てメス。
※だからみなしごハッチの生家(巣)を度々襲う巨悪なスズメバチも、やたらおっさん顔だけどアレ全部メスなんだよなあ・・・。

しかし迫力を出すために「別の世界の蟻のはなし」と設定し、「あえて雄で描いた」と、ご丁寧な後書きがある。大変教育的です。あー、アートの世界なのに、揚げ足取りをするようなこういう無粋なヤツがいるからですね。スミマセン。

いやー、しかしコレは卑怯だ。こんな強烈な表紙が本屋に並んでいたら、買わないわけにはいかないじゃないか。お値段¥1400也。

絵が素晴らしすぎるので、絵本よりも昔ながらの紙芝居スタイルもよく合うと思う。

1枚、また1枚と絵が引き抜かれるたびに場内騒然、みたいな。

このリンクを貼るためにアマゾンで検索したら、「給食番長」の方だったことが判明(アマゾンのレビューに「うんこと給食の競演」と素晴らしいコメントが)。コレもまた大好きな絵本だ。気づけよ、自分。

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この記事を書いた人
ムシモアゼルギリコ

フリーライター歴20年(※虫関連の記事以外、基本は別名義)。
2008年頃から昆虫料理研究会(内山昭一主催)に参加し、“虫食いライター”としての活動を始める。
TV、ラジオ、雑誌、トークライブ等で昆虫食の魅力を広めているほか、映画やバラエティ番組などに登場する“虫食いシーン”の、調理サポート等も行う。

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