■著者:日野日出志
■発売:ひばり書房
■発行:1975年
■虫:イモムシ系の新種
食用厳禁!
血&汚物まみれの巨大毒虫
もしも「トラウマになったマンガ」とアンケートをとったなら、日野日出志作品は間違いなくトップ3に入るはず。
「ひひひひ・・・・・・!」と、血飛沫や狂気にまみれる日野節怪奇譚の中には数々の異形が出てくるが、
巨大ないもむしになってしまう『毒虫小僧』も壮絶だった。タイトルのとおり、主人公が、毒をもつ巨大な虫に変身してしまうという話だ。
“虫は友達さ!”ないじめられっこが、泣きっ面に蜂とばかりに毒虫に刺されたことから全身がドロドロにとろけ、やがて巨大な幼虫と変態していく。
「全身ドロドロ~」も、日野先生の十八番的残酷描写なのだが、完全変態昆虫が成虫になる過程では、蛹時代に体内を一度ドロドロに溶かすので、あながち残酷描写だというだけではないのかもしれない。
手足が腐ってもげて悪臭をまきちらし、やがて虫になって自分の抜け殻と添い寝するはめになり、挙句の果てには家族に毒殺されて、下水道で死肉を食べて暮らすようにり・・・って、人の想像力の最北(もちろん褒め言葉)を、このマンガに見たような気がする。
子ども時代というのは親の存在が非常に大きく、置いていかれる夢を見ただけでも暗~い気持ちになったものだが、そんな時代に読んだ日野漫画は、なんだか怖いというよりは、涙なしには読めなかったもの。
しかも住まいは下水、食べ物は腐った肉って(ひい……)!
短足ボディでヨチヨチ歩く虫型モンスターは日野漫画の中では比較的キュートだが、こぼれ落ちそうな血管の浮き出た凶眼は健在。でも、毒虫という奇形になってしまうことよりも、力を得たことで殺人鬼(殺人虫?)になっていく少年の心の変化のほうが、はるかに悲しい。日野漫画は「怖い」を通り越して別次元の何かを感じさせるが、この作品も類にもれずです。
刺されて腫れたりする“虫の毒”の多くはたんぱく性のものが多いそうで、その類の毒は加熱すると成分が分解されるため、調理して食べる分には問題ないのだが(神経毒を持つハンミョウなどはキケンです)、だからといってこんな虫を食べたら畜生道に落ちそうで後味が悪すぎる。
いや、そうじゃなくて毒虫に変身するのか。