虫食エッセイ

第7皿 未来の携帯食・蟻

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少女マンガにも登場する
未来の虫食いシーン

むしくいシーンは怪奇漫画や少年漫画ばかりでなく、少女漫画にも登場する。
今回紹介するのは、気と目力と運がやたら強いヒロインが印象的な『7SEEDS』だ(田村由美・著。現在『月刊フラワーズ』で連載中)。

隕石で文明が滅ぶことを予測した政府が「種を残そう」と計画したことから、大人の都合で選ばれた主人公たちが未来へ強制送還されるという物語だ。

少女漫画ながらも『漂流教室』(楳図かずお)や『サバイバル』(さいとうたかを)のエッセンスがちりばめられているので、骨太で読み応えがある。さらに描写こそマイルドだが、巨大昆虫やウィルスに寄生されたり猛獣に目玉をざっくりやられたりという展開もパニック映画的で、ホラー好きにもオススメできる作品である。

隕石が落ちて再び氷河期を迎えた地球は、原始時代のような大自然に逆戻りしている。冷凍睡眠によって突然そんな環境に送り込まれた主人公たちは、食糧問題や自然の驚異、さらにはそれぞれのトラウマと対峙していくことになる。

未来への種となるメンバーは“春・夏・秋・冬”と名付けられたチームに分けられているが、虫を上手に扱うのはこの計画専用に育てられた、特殊な“夏Aチーム”。

夏Aチームは良くも悪くもサバイバルの知識“ばかり”が叩き込まれているので、『ドラえもん』も『ぐりとぐら』も知らなくとも、虫を食料にする知識は備えている。また、他のチームでは春班の主人公「花」もアウトドアが得意という設定なので虫に抵抗がなく、事態を把握していない物語序盤から虫を食料にすることを視野に入れているのが素晴らしい。

そんな『7SEEDS』の虫食いシーンをざっとご紹介しよう。

食料の乏しい土地で、夏Aチームは木の皮をべりべりっとはがして採取したプニプニの幼虫をおやつにする。

焚き火であぶって、とろ~り、ハフハフ。くー! 美味そう!

春チームの花はワケあってひとりになってしまうが(現在は他メンバーと合流中)、冷静に甲虫をモグモグ食べて命をつなぐ。

また、携帯食として「蟻」を使うメンバーがいるのも面白い。
いかにも栄養のなさそうなスープを出されると、パラパラッと蟻を加えるのだ。その光景は、まるで天然のサプリメント!

しかしそれを見た他のチームは「ひいいい!」と震えるのだが……、まあ、虫ですからね。仕方がない。

さて、前置きがすっかり長くなってしまったが、今回はこの“蟻”について検証してみたい。

蟻の味を検証するために真夏の公園で捕獲を試みるものの、地味につらい作業であった。

※このテキストは『 Vol.13』にて発表したものです。

続きは本誌でお楽しみください!

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この記事を書いた人
ムシモアゼルギリコ

フリーライター歴20年(※虫関連の記事以外、基本は別名義)。
2008年頃から昆虫料理研究会(内山昭一主催)に参加し、“虫食いライター”としての活動を始める。
TV、ラジオ、雑誌、トークライブ等で昆虫食の魅力を広めているほか、映画やバラエティ番組などに登場する“虫食いシーン”の、調理サポート等も行う。

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