漫画虫カルチャーレビュー

『恐怖!呪いの鍾乳洞』岬マヤ

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■著者:岬マヤ

■発売:レモンコミックス(立風書房)

■発行:1988年

■虫:ゴキブリ、カマドウマ

人面動物祭りのクライマックスは

巨大便所コオロギの恐怖!

便所コオロギというありそうでない大胆変身をやってのけたのが、またもやレモンコミックスから『恐怖!呪いの鍾乳洞』だ。

夏の合宿で避暑地を訪れた女子中学生が、突然「人面動物」に出会うことから事件は始まり、なんでそんなものがいるのかというと、

財宝を守る山鬼(やまんば)の仕業なわけで。山鬼はターゲットを思い通りの姿に変えられるという日本キルケーな魔物なのだ。

物語はとても分りやすく進み、

人面ガエルがビョコビョコ飛び出てくれば「神社には近づくな!」

人面猫が登場すれば「実はさっきの女は・・・」

人面馬は「オレはあの女の秘密を知っている!」

RPG(ロールプレイングゲーム)?  RPGなの!?

通りすがりのものが状況を説明するんですね。分ります。

しかしヒロインはそんなことはもちろん気にせず、虫を見ても「きっと人面昆虫よ!」とブルブル怯える。

人面昆虫って何? 何故か誰もつっこまないヒロインの友人たち。

本気で描いているのか笑いを誘っているのか、読み手がどんなスタンスで挑めばいいのか分らず、

心細い迷子気分になるのも、レモンコミックスの醍醐味です。

そして物語は山鬼のあふれんばかりのサービス精神でますます盛り上がり、「天然のチューインガムよ♪」と

ナメクジをくっちゃくっちゃ噛みながらヒロインご一行様が案内されるのが、前出の動物をあつめた「人面動物園」(!!)

2ページひと見開きを贅沢に使い、人面馬・人面猫・人面蛙が、ば・ばーーんと登場するシーンは、口に物を入れて読んではいけません。

迷作の宝庫であるレモンコミックスのなかでも、トップクラスの奇天烈!

人体でイケナイものを思いつくままに作り上げて飼育するというのは、発禁映画『怪奇!奇形人間』を思い出させ、それと同時にこの本が発行された80年代といえば都市伝説の「人面犬ブーム」があったわけですが、ここにも時代のエッセンスがたっぷりと。

でも、人面サンショウウオは、時代を先取りしすぎてやしないか。

レモンコミックスは子供向けレーベルなので、教育的配慮を感じさせる展開も、ちゃーんと織り込んである。

強欲夫婦の夫をゴキブリ、妻をコウモリに変え

「お前の夫はゴキブリだ……。コウモリがゴキブリを食べればえさいらず。くくく!」

と、食物連鎖のお勉強もできちゃいます。

トンデモ作品の中でもこういったちょっとした場面から生真面目な感じが漂ってくるのも、また、たまらない。

そしていよいよ物語ラスト、親切な鬼女は昆虫大好きっ子なヒロイン梢ちゃんを便所コオロギに変身させてあげる出血大サービスを繰り出す。やっと出ました昆虫変身!

便所コオロギ=カマドウマといえば、暗くじめじめした室内でビョンビョン脅威的な脚力を見せつける姿に恐怖を感じさせるが、そんなことよりも

「そんな汚い昆虫いやーあ!」

「同じ動物でも…イボヤモリなんてイヤだったの…」

と変身姿をえり好みする少女たちよ、選んでる場合じゃないってば。

それにしても人間サイズの便所コオロギ、一体何m飛び上がるんだ。地味に怖いです。

カマドウマは食べたことがないが、まあバッタと同じようなもの・・・・・・なのか!?

梢ちゃんサイズほどではないが、大きいカマドウマが見たいという方は、ネットで「ジャイアントウエタ」と検索してみましょう。

あくまでご自身の判断でお願いします。

ゴキブリなんだから、もうちょっとファイトを見せてほしい!

 

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この記事を書いた人
ムシモアゼルギリコ

フリーライター歴20年(※虫関連の記事以外、基本は別名義)。
2008年頃から昆虫料理研究会(内山昭一主催)に参加し、“虫食いライター”としての活動を始める。
TV、ラジオ、雑誌、トークライブ等で昆虫食の魅力を広めているほか、映画やバラエティ番組などに登場する“虫食いシーン”の、調理サポート等も行う。

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