虫食エッセイ

姑VS嫁! 疑惑の蛾弁当その③ 完結

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蛾の味わいはヘルシーコンシャス(多分)!

豆に近い植物性淡白質系

さて、そんなふうに新旧にわたって大活躍のお蚕様は、糸をとることを目的に飼育されるため、繭になるとさっさとグツグツ煮られてしまう。蛾弁当のように「成虫」の姿に出会える機会というのはなかなかないのだ。蚕は完全に家畜化された虫なので、野外で採取してくることも、まず不可能。蚕を手に入れて自分で育てるという方法もあるが(育成キットが売られている)、今回は某研究所から分けてもらった成虫を使ってみた。

めったに出会えない、蛾の成虫。

さて、いよいよ”蛾弁当”を味わうべく、まずは「まゆこ」を作ってみよう。

蛾や蝶を調理する時の基本だと思うのは、まずは流水で鱗粉をよく洗い流すこと。そしてフライパンで乾煎りして羽を焼き飛ばす。

まゆこはいわゆる“佃煮”なので、あとは醤油と酒で好みの濃さに味つけすればいい。

楳図マンガの「蛾弁当」では蛾の羽もキレイに残していたが、羽は特に味もなく口当たりが悪くなるだけなので

あまりオススメできない調理法なんじゃないかなあ。

「羽をつけたままだなんて、母さん、なんて手抜きなんだ…」。

もしかして、男がびっくりしていていたのはそんなポイントなのか…?(違います)。

【まゆこ レシピ】

■     材料

・蛾(今回は蚕蛾を使用)

・油

・酒、しょうゆ、みりん

■作り方

①     蛾をよく洗い、りんぷんを洗い流す。

②     ①の水気をよく切り、フライパンで乾煎りして羽を焼き飛ばす。

③     しょうゆ、酒、みりんで味つけする。

以上で、「まゆこ」の完成!

味はさほど変わらないが、楳図流・蛾弁当の雰囲気を味わえるように、数匹は素揚げにして塩をふってみた。

しっとりしているまゆこよりもサクサクッとして、これはこれでなかなか美味い。

蛾弁当・ムシモアゼルギリコ風

一般的な「まゆこ」はオス蛾を使うとというが、個人的にはメス蛾もとても美味しかった。

メスはお腹の中に卵が詰まっているので口の中でポリポリッとなり、まるでクランキーチョコレートを食べているかのような食感。

そして成虫(=蛾)の味は蚕の蛹とあまり変わりはなく、植物性淡白の豆に近い味がした。

ちなみに蚕の味はどうか。一般的に販売されている「蚕の佃煮」や、韓国の煮つけ「ポンテギ」などは、独特の臭みがあるという人が多いのだが、その理由は蚕さなぎが繭から糸をとった後のものなので、いわば“出がらし”の状態であるからだと思う。

生きているうちに繭を切り出して取り出して新鮮なうちに調理すると、臭みはほとんど感じられない。

以前、実家のオーブンで新鮮な蚕を焼いていたら、野次馬的に祖母がのぞきにきたので味見したもらったところ、

「着物を広げたときの香りそのもの! 口の中にシルクの香りがひろがるわ!」

なーんて、風雅な事を言っていた。大正生まれのボキャブラリー、侮れないわー。

話を問題のマンガ『蛾』に戻そう。

物語ラスト、蛾が仕込まれた弁当のふたを開けた妻は、予想外の行動に出る。

おかしいのは男? それとも女たち?

謎を残したまま物語はぶっつり終わる。そして真実は闇の中へ。

読み手それぞれがその後に想像をめぐらせ、恐怖の物語を楽しむのだ。

うーんでも、やっぱり“まゆこ”だったんじゃないかなあ。あくまで私見だけど。

【蚕蛾 調理ポイント】

★リンプンは洗い流してから調理しましょう

★羽は焼き飛ばしたほうが口当たりがよくなります。

★煮ても揚げても美味しく食べられますが、体が小さく柔らかいので、さっと火を通す程度にしてふっくら感を残すと◎。

この記事を書いた人
ムシモアゼルギリコ

フリーライター歴20年(※虫関連の記事以外、基本は別名義)。
2008年頃から昆虫料理研究会(内山昭一主催)に参加し、“虫食いライター”としての活動を始める。
TV、ラジオ、雑誌、トークライブ等で昆虫食の魅力を広めているほか、映画やバラエティ番組などに登場する“虫食いシーン”の、調理サポート等も行う。

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