楳図かずお『怖い本 ~闇~』より
コレはいじめ? それともおかず?
またまた登場、THE虫弁当!
「虫で嫌がらせをする」というのは、マンガの定番シーンである。
継子を弱らせるため、寝ているところに「ほほほ!」とムカデをぶちまけてみたり、気にくわないクラスメイトの顔につぶしたカブトムシの幼虫をなすりすけてみたり。
マンガの中には虫を使ったスーパーハイテンションなアタックを山ほど見つけられる。
そんな“虫アタック”を、嫁VS姑という大人の構図で料理した作品が、楳図かずおの『蛾』である。
楳図かずおのマンガは、大人だからこそ感じ取れるような不思議な余韻を残す作品がたくさんあり、短編の『蛾』もそのひとつだろう。
主人公の男は妻と自分の母と暮らしている。いわゆる“完全同居”ってやつですね。
夫婦は共働き。そして職場へ毎日持っていく弁当の準備は、姑の仕事らしい。
とあるいつもと変わらぬ平凡な朝、男が間違って妻の分の弁当を持ってきてしまったことから事件は始まる。
“ま、ま、まさか母さんが嫁いびり……!?”
キタ! キタ! レディスコミックス的展開! 我ながら下種だとは思いつつ、ついワクワクしてしまう。
何故そんな疑惑が生まれたのかというと、間違えて弁当を持ってきたことに気付いた夫が、「嫁の弁当をちょっと見てやろう」と何気なく蓋を開けてしまったのがきっかけだ。
米の上、本来の“梅干ポジション”に乗っていたのは、なんと“蛾”だったのだ。
嗚呼、弁当箱はパンドラの箱。
平凡で穏やかないつもの朝が、一瞬にして“羅刹の家”(嫁姑大戦争を描いた井出知香恵のレディスコミックで、1998年にドラマ化もされた)に早変わりである。
ああ!? 着物がズタズタに! 追い出してやる! ……お義母さまっ!!
嫁姑戦争ってのはどちらかが死ぬまで続く生き地獄さ(ちゃらら~ん)!!
……そうじゃなくて、えーと、もしかして奥様、もしくはお母様は信州のご出身なのでは?
だって「まゆこ」と呼ばれる、蛾の佃煮があるのだから。
その②に続く
蛾の成虫を料理するときは、羽を焼き飛ばしてから!