■著者:中川ひろたか=文 酒井絹恵=絵
■発行:2010年
■発売:偕成社
■虫:カブトムシ
ど迫力の擬人化キャラを眺めるだけでも価値アリ!
カブトムシがくれた不思議カードの物語
漫画やアニメだけでなく、絵本の世界にはさらに自由な発想の擬人化虫があふれている。
一度見たら忘れられなそうなど迫力タッチの絵本『りんごちゃんとビートルカード』にも、擬人化果物や擬人化昆虫が登場する。
マツコデラックスのような大きなお顔の「りんごちゃん」が本作の主人公。
ある日散歩をしていると、ビートルに乗ったカブトムシたちがエンストで困っているところに出くわした。
「オー プリーズ プリーズ ヘルプ ミー」
…英語なの? 外国産のカブトムシなの?
な る ほ ど!
人面カブトムシは英国ロックスター顔。
特にジョンレノン顔のカブトムシ・・・・・・怖い。
「カブトムシはあまり美味しくない」というのが定説だが、これはルックス的にもさすがに食べにくい。
そうこうして、手をかしてあげたりんごちゃんが「サンキューガール。おれいにこれをあげよう」ともらったのが、「ビートルカード」。
困ったことが起こった時に、役にたつそうだ。
ちなみにリンゴちゃんが嫌がっているのは彼の顔ではなく、
「困ったときに役立つカードをもらうと、これから困ることがおきるみたいじゃない」
という理由だから。哲学的な大顔ガールだ。
そして嫌な予感は的中。そういうものですよね。「こまったこと」が次々やってくる。
コレは困る。
でもりんごちゃんは大丈夫。ビートルカードでふしぎな力がわいてきて、ピンチをなんとか乗り越えていくのだ。
この「こまったこと」にも、往年の音楽シーンをリードしたあのもみあげ男が登場したりと、なかなか芸が細かい。
りんごちゃんがこの人面カブトムシたちと出会ってラッキーだったのかは正直微妙だが、
異種の間に友情が芽生えたことは間違いなさそうで「よかったね」と思える。
スーパーハイテンションなタッチにパワーをもらうか恐怖を受け取るかは
嗜好の差が大きく影響するだろうけれども、
ラストは一応ハートウォーミング展開なので、絵本好きな人へのプレゼントにしてもギリギリセーフ(多分)。
ちなみにカバー折り返し部分には、切り取り式のビートルカードがついています。
切り取った本体は財布に入れ、被災地に義援金という名のビートルカードを送ってもいいかもしれません。