第4回:ゴキブリ&蛾を食べる会

その他

【昆虫料理研究会 第4回 例会報告】

■開催:2000年8月27日

■場所:稲城

■参加者:3名

前回と同じ京王線稲城駅に午後6時集合。参加者3名。初めての夜間の例会でした。

主としてクヌギなどの樹液にあつまるガやゴキブリが今回の試食のテーマでした。残暑はきびしいものの、ステージはもうウマオイ、コオロギ、ツユムシなど鳴く虫が勢揃いしてすっかり秋にかわっていました。ガ類とヤマトゴキブリをそれぞれ10匹以上、そのほかカブトムシ(メス)など採集ができ、虫たちのかなでる音楽を聞きながらの試食会でした。

1・捕獲

今回は初めての夜間採集でした。雑木林は暗くなるのも早く、ネットを片手に採集をはじめたころには闇が一帯をおおっていました。主なテーマはガ類とゴキブリなので、クヌギ、コナラなど樹液の滲んだ木々の幹を懐中電灯で照らしながら歩きました。予想通り集まってきて、ガ類はネットで、ゴキブリは手でそれぞれ10頭以上捕ることができました。ゴキブリの種類は樹液などを好む山地性のヤマトゴキブリで、人家の中などにいるゴキブリとは違います。これらの他にカブトムシ(メス)とウマオイ各1頭を捕りました。カマドウマは乾燥していたせいか1頭もみかけませんでした。

2・調理

今回はゴキブリとガという食材の性格ということもあり、すべてゴマ油を使って空揚げにしました。

3・食べる

■ヤマトゴキブリ
台所に出没するヤツとちがって小柄で樹液が好みとあって、口に入れるのにもそれほど抵抗はなかった。酢醤油で食べる。空揚げのため、残念ながらこれがゴキブリの味というのはわからない。淡泊。甲虫類やバッタ類とちがって柔らかく外皮が気にならない。丸ごと食べられるのがいい。ただし夜間の屋外なので食材がよく見えないという問題がある。明るい中で食欲がどうなるかは試してみないと分からない。時間をかければ大量に捕れるのが強み。
★レシピ1
フライパンで炒ってサクサクした食感を楽しみたい。塩をふる。派手でカラフルな皿が似合いそう。

★レシピ2
佃煮にして「ザザムシ」だといって出せば誰もが珍味と感じるに違いない。クッキーなどではさみレタスなどを敷いた白い皿に盛るのがいい。

■ガ類

前回の「噛むとプチプチした歯触り」を期待。しかし今回は卵をもった個体に遭遇できなかったらしい。そうした歯触りを実感できなかったのはとても残念。時期的に産卵が終わってしまったメス個体が多いせいだろうか。暗かったため雌雄の判別もできなかった。やはり酢醤油で食べる。味はゴマ油の空揚げのため淡泊。これも丸ごと食べられるのがいい。翅はパリパリした歯触り。鱗粉を気にする向きもあるが、揚げてしまえば全く気にならない。

★レシピ
翅をむしり、カリッと揚げ、チーズで巻いて洋風、もしくは海苔を巻いて和風、キムチなどが合いそう。

■カブトムシ(メス)

外皮が硬いのでざっと茹でてから空揚げ。なにしろ1頭なので切り分けて小片を食べる。酢醤油。胸部に多少の肉感がある。しばらくクチャクチャ噛んでから硬い外皮と翅を吐き出す。味はやはり淡泊。昆虫食の盛んなタイの塩茹でしたガムシ、コガネムシ類を食べたことがあるが、茹でただけだと多少の臭みがある。カブトムシも似たような味だろう。

★レシピ
できるだけ大きなオスを1頭用意。さっと塩茹でし、胸部に切れ目を入れ、臭みけしに香辛料をふりかけ皿にもる。ズッコラあたりを添える。味付けはトマトケチャップがいいだろう。

(内山)

【ゴキブリ コラム】

ゴキブリを食べる

白鳥信也

ゴキブリを食べましたよ、という話をすると一様に、けげんな顔をされる。女性だとその場で口を押さえながら、気持ちが悪いという反応をする人が圧倒的。

「そういう人だとは思いませんでした」とも言われたけれど、それほどのことか、たかがゴキブリではないか、と思う。

たいがいの人はゴキブリは汚さの象徴ととらえているようなのだ。ゴキブリを食べて死んじゃった人もいるんだよ、という人も多かった。よくよく聞くと「テレビジョッキー関係者」というばかりで、都市伝説の類ではないだろうか。なにしろゴキブリ研究者のなかには、生の刺身で食べる人もいるくらいで、ボツリヌス菌などによる食中毒にさえ気をつければ立派な食材だ。

今年は、春から夏にかけて、雪印の汚染乳製品や食品への昆虫、小動物混入事件が相次ぎ、そのつど大規模な回収があった。工場のラインが停止したり、販売を一時取りやめたり、虫一匹で大騒ぎだった。中小企業ではつぶれてしまったところもあるくらいだ。雪印の工場汚染の放置はひどいとは思うけれども、菓子や漬物に虫がついたくらいでがたがたするなよ、と思う。虫なんてそこらじゅうにごく普通にいるものだし、知らないあいだに混入している場合も多い。トマトの缶詰や果物ジュースに果実を好む子バエの卵や死骸が入らないほうがおかしいと思う。むしろ、そうした虫類が見た目に気持ち悪いからといって、薬剤を塗布したり、散布しているほうが、よほど恐い。虫自身は、栄養価も高いし、人類は相当期間にわたって昆虫食しつづけることで生き延びてきたはずだ。旧石器時代の代表的な遺跡であるスペインのアルタミラ洞窟にも、ミツバチの巣を採取している人々の絵が残されている。ハチミツだけではなく、ハチの子も食べたはずだ。わたしたちの記憶の基層部にはその味覚が流れているのではないだろうか。何十世代にもわたる昆虫食の味そのものが類的な記憶の川の底を漂っている。だから、僕は昆虫食をするごとに、なつかしいものを思い出すような感覚にとらわれる。はじめて食べるのに、そうではない既食感とでもいう感覚がこみあげてくる。ハチの子のときも、タイ産のサナギのときもそうだった。これから出会う昆虫達にも、同じような感覚がよみがえってくるかもしれない。
今回の昆虫食研究会は、たいがいの人間に嫌われているゴキブリを食する、がテーマと なった。自宅内で同居しているゴキブリ持参案もあったけれども、とりあえず野外にいるゴキブリからということになった。八月二十七日夕方、いつもの稲城の森に参集して、捕獲することになった。当日は、朝からの野球の疲労で門田氏が欠席、僕と内山さん父子で山に登る。山中の開墾地の脇のクヌギ林で、ゴキブリと卵をもったガをめざす。卵をもったメスのガは、前回一匹しか採れず、内山さんが食したところ絶品だったということで、今回の目標リストに加えられた。

夕闇のなかのクヌギの樹には、小型のゴキブリたちがひそんでいた。一般住宅に主に生息しているのは大型種であるクロゴキブリ(ゴキブリ科、成虫30~38 ミリ)で、飲食店などでよく見かけるのが小型種のチャバネゴキブリ(チャバネゴキブリ科、成虫10~15ミリ)だ。クヌギにいたのは、クロゴキブリより一回り小さなヤマトゴキブリ(ゴキブリ科、成虫20~30ミリ)で、樹液を好む。ヤマトゴキブリは唯一の日本土着種で、世界でもっとも北限で生息しているゴキブリである。もう北海道にも定着したそうだ。言ってみれば、ゴキブリ界のニホンザルみたいなもの。このヤマトゴキブリを僕は捕虫網でつかまえようとしただが、虫を網で押えてもすぐにデコボコの地面と網のすきまから逃げ出してしまう。やはり、手で捕まえるしかない。屋内型と違って、体表がネバネバしていないので、不快感はない。普通の昆虫を捕まえるのと同じ要領だが、何しろすばしこいので、大変。グチャッとつぶしてしまったりもした。それでも、人に馴れていなかったので十匹ちかく捕まえることができた。家庭では、こうはいかない。捕まえたガとあわせて、さっそく唐揚げにして、食べてみる。殻付きの小エビを食べている、そんな印象で、くせがない。

ガの方は、残念ながらどれも抱卵してはいなかったので、卵の絶品さは味わうことができなかった。ガ自体はなじみやすい味で、中身が少し残っていたほうが香りも生きてくるのではないだろうか。イメージで苦手な人はよく揚げれば、無難なおつまみといったところかだろうか。

ゴキブリについては、このまま、レモンをしぼって食べてもいいが、チリソース風味にしたり、バター炒め香草添えとかにしたら、けっこういけそうな気がする。クリームソース系だとどうしても、白色のソースのなかで真っ黒なゴキブリが目立ってしまう。中華のトウチ炒めだと、トウチの色とゴキブリの色が同系なので嫌悪感が生まれないかもしれない。僕らの課題は、やっぱりレシピの開発ですねえ、という話題になった。タイでは、ゴキブリをふりかけにして食べるし、中国では当然のことながら、漢方薬として、うっ血や閉経、悪寒、宿便などに用いられているそうだ。欧米でも、腎臓などの薬として近年まで利用されていたようである。この経緯からすれば、明らかにゴキブリは健康にもよさそうである。
ゴキブリについては、固体数が多く身近に捕まえられるので、将来の大震災などの危機的情況ではきわめて有効な食料になりうるはずだ。第二次世界大戦で、日本軍の捕虜となったアメリカ人が乏しい食料のなかで生き延びられたケースの中には、ゴキブリを食べることができたかどうかということもあったそうだ。十九世紀のイギリスの船乗りたちは、船内で捕まえたゴキブリをスープにして栄養補給していたらしいし、ゴキブリはやっぱり緊急時の大切な食料ではあるまいか。こうやって食べたらおいしそう、食欲がそそられる、そんな提案をしてみることで、日本人に根深いゴキブリぎらい、偏見と呼ばれるようなものを取り除くように努力していきたい。

参考

「ゴキブリのはなし」安富和男 著・技報堂出版(91年発行)
「虫を食べる人びと」三橋淳 著・平凡社(97年発行)

その他虫イベントレポート
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