第6皿 先生がアレを食べるようになったワケ

 やさしい先生には秘密があった

それは“アレ”を食べること!

アレです。

虫を食べていると様々な驚きがある。

バッタは熱を加えると赤くなる。蜘蛛はチョコレートの味じゃない。
カメムシは種類によってはパクチー的な風味がある。
セミ幼虫はピーナッツ味。

スローな動きのマダガスカルゴキブリも、水洗いすると猛スピードで逃げ出す(当たり前だ)。
そしてそんな驚きは、マンガの虫食いシーンにも溢れている。

こぼれ落ちそうなギョロ目で「ヒヒヒヒヒ……」と笑うキャラクターで
当時の小学生たちを恐怖のどん底に突き落とした日野日出志の作品『ぼくらの先生』だ。

子供の頃、部屋に置いておきたくないマンガNo.1であった。

主人公は小学校教師。生徒にも動物にも優しくおおらかで、どっしりした大柄なボディは包容力さえ感じさせ、ちょっと甘えてみたくなる。
それでいて素朴でもっさり、いい歳して独身だという不器用な感じも微笑ましい。

あだ名なんか“大仏先生”なんて立派なものだ。
しかしこの大仏先生、子ども時代は病弱で寝たきり生活であったという。

一体どうやってこんなに健康に?

それはある日、偶然食べてしまったものが彼を変えたのだ。

 

寝たきりだった少年時代の先生には友達もできず、たまに布団から出られても特にすることがなかったのだろう。ある日寝床からはい出た少年は、なんとなく縁側で過ごしていた。そして“ふわ~あ”とあくびをしたところ、偶然何かが口に飛び込んでくる。

 

……キタ、キタ、虫だ!

その口に飛び込んで来た虫とは、美しい蝶! 少年は驚いて思わずそのまま食べてしまい……さあ、ココが人生の分かれ道です。

 

「うまい! チョウがこんなにおいしいものだったなんて……」

 

生命の目覚めである。

蝶の美味しさに感動していると、みるみるうちに不思議な力がわいてきて、蝶をはじめイモムシ、ネズミ、小鳥などを手当たり次第食べるようになっていく。

そして少年はどんどん健康になっていく。いやあ、食は健康の基本ですねえ。少年の「そのへんで捕ったものを生で」という食べ方が本当に正しいかどうかはさておき、できるだけ多くの種類の食品から栄養をとったほうがいい事は健康を意識している人なら誰でも知っていることだろう。

だが、残念なことに先生はそんなありきたりの理由で健康になったワケではなかったようで、“小動物を生きたまま”食べないとたった1日で老人のようにシワシワになってしまうというやっかいな運命も抱えてしまうのだった。

そして物語ラスト、先生は一体何を食べるのか……?

ああ、口に飛び込んできたのがもっと別の食材だったら、海原雄山的人生を踏み出したかもしれないのに。「寄食の人」への第一歩は、どこに潜んでいるか分らないもの。

虫を食べる我が身を振り返ると、この先生にはちょっと他人事とは思えない何かを感じてしまったりもする。

※このテキストは『TRASH-UP!! Vol.12』にて発表したものです。
続きは本誌でお楽しみください。蝶の食べ方載ってます。



2nd cover & グラビア

和田晋侍

PICK UP

『KOTOKO』公開記念 塚本晋也監督ロングインタビュー
『レッド・ティアーズ』公開記念 倉田保昭インタビュー
新天地の落伍者たち コーマン学校落第生同窓会!
JAPANESE BAND MOVIE GOES ON
~和製バンド映画の四方山話~
没後30年 来るべきファスビンダー

スペシャル対談! 東陽片岡×都築響一

インタビュー

メイル・ザルチ(『発情アニマル』監督)
キム・サンマン(『ミッドナイトFM』監督)
グレッグ・マクリーン(『マンイーター』監督)
Qomolangma Tomato
倉内太
おにんこ!
下山
『コラボ・モンスターズ!!』
松本若菜/中原翔子/宮田亜紀/小島可奈子

MOVIE

関西Z級映画の聖地 天六シネ5ビルの伝説 餓鬼だらく
KMDBで韓国映画を見よう!《後編》 岡本敦史
アルチザン 津島勝の京都映画渡世 高鳥都
『先生を流産させる会』:制作ノート4 内藤瑛亮
TRASH MOVIE REVIEW

MUSIC

オモチレコード SXSW体験記
MUSIC REVIEW

ART

ミクラフレシアの 「THE MAD MAD MAD KNITTING LABORATORY」
「ソレイユ・ディシプリン」 根本敬×河村康輔
「笑う体 啼く躰」 中村国聖

書評

金子鉄夫「ちちこわし」 萩野亮

COMIC

呪みちる
さとうあやか
やまがたいくひろ(core of bells)
ぽんぽんにないない
石井モタコ(オシリペンペンズ)
ai7n
ニイマリコ(HOMMヨ)
MARUOSA
GOD☆J



金子鉄夫
榎本櫻湖
広瀬大志
鈴木一平
橘上
小笠原鳥類

COLUMN

新連載1 ダンボール・バットAMIの義味異死絵瑠多亜
新連載2 武田砂鉄の不快重音天国
新連載3 かに三匹の アニメ墓堀人!

miss Donutの「Rock ‘n’ Rookie」
DOOM!の「10年以下の懲役、または1000万円以下の罰金、もしくはその両方が科せられてたまるものか!!」
ナカダヨーコ 産めよ 増やせよ 覗き見させて、大家族
怪奇漫画で食す“アレ”を徹底研究 あのマンガ(の蟲)メシが食べたい! ムシモアゼルギリコ
ちょっと聞いてよ! YOU GOT A RADIO!
フレネシ&ショック太郎 世の中はシックシック
イライザ・ロイヤルのおんなの因果道:女王編
富山発☆狂い咲きサンダーバード!! ピストン藤井
Wiilie Whopperのベレーザ!ブラジル
田房永子 「体内と書いてコスモ」
紐育比岸 田辺愛子
夢見るちから 神谷一義(オフノート)
バウス日記 武川寛幸(吉祥寺バウスシアター)
アクセル長尾的ワールドミュージックガイド
kayoのちょっといいですか?

 

 

 

この記事を書いた人
ムシモアゼルギリコ

フリーライター歴19年(※虫関連の記事以外、基本は別名義)。
2008年頃から昆虫料理研究会(内山昭一主催)に参加し、“虫食いライター”としての活動を始める。
TV、ラジオ、雑誌、トークライブ等で昆虫食の魅力を広めているほか、映画やバラエティ番組などに登場する“虫食いシーン”の、調理サポート等も行う。

ムシモアゼルギリコをフォローする
虫食エッセイ
スポンサーリンク
ムシモアゼルギリコをフォローする
スポンサーリンク
昆虫食ポータルサイト むしくい