虫食エッセイ

第5皿 滋養たっぷり!? ムカデde介護

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とんでもマンガに登場する”虫食い”は
食べ方も凄かった。そりゃそーだ。

今回紹介したい蟲メシは、いばら美喜の『死神がくる!』に登場する「ムカデ食い」。

いばら美喜は、古賀新一率いる80年代の怪奇漫画レーベル・レモンコミックス(立風書房)で活躍していた漫画家だ。

レモンコミックスにおけるいばら美喜作品は

「異界から悪いものがやってきて、体をど派手に破壊されて死んじゃいましたとさ」というのが定番なのだが、

『死神がくる!』では、死神が現れて怖いことをするというタイトルそのまんまの展開に加えてムカデとトカゲが大活躍する。

死神のデザインも斬新です。

ストーリーはこうだ。

街で目玉のない死体が相次いで発見される。それはなんと「目玉が大好物な死神」の仕業であった。

死神はムカデを”使い魔”的に操り、死体からせっせと目玉を運ばせているのであった。

イチゴをつまむかのような気軽さで「イー! おいしい!」と目玉に舌鼓を打つ死神のキモ可愛さは、

自由過ぎる作品を乱発していた流石のレモンコミックスクオリティ。

ついでに黒づくめファッション&髪を逆立てた80年代パンクスのような死神の風貌も、

時代を感じさせて味わい深い。

さて、そんな猟奇事件の発生で街が不安に包まれている中、ある日郷土研究部(じ、地味!)のヒロインたちは、

部活中に森の中で古びた一軒家を見つける。

家の中をこっそりのぞくと、そこにいたのは寝たきりの老人と世話をする娘らしき老婆(推定90歳)。どうやら食事の時間らしい。

「お父さま お食事にしましょうね」

老婆が寝たきりの老人に何かを食べさせる。

お粥? スープ? いやいやレモンコミックスだもの、そんなワケはない(失礼)。

娘がお箸でせっせと父親の口もとに運んでいたのは、生きたムカデ! いいのか、それ。

野趣あふれる踊り食い。もしゃもしゃ。

「介護食」とネットで検索すれば、出てくる単語は「とろみ食」「ミキサー食」「きざみ食」である。

要するに飲み込みやすく・口当たりよく・むせにくい食事ということだ。

なのに寝たきり老人がムカデの踊り食い…。

ムカデは固いだけでなく、触れるものに噛み付くという恐ろしい性質があるのだが?

しかし虐待ではないようで、おじいちゃんはモシャモシャと平然と食べている。“細かいことを気にしたら負け”というのがレモンコミックスを読むときのお作法とはいえ(マイルール)、虫食いとしてはツッコミを入れざるをえないではないか。

ムカデは朽木の下や中、もしくは湿った落ち葉がたまっているようなジメジメしている場所で見つけられるが、姿を現すとゾロゾロッとした動きに一瞬ドキッとなる。虫ハンターたちが集まっていても、皆「うあぁっ!」と一瞬ひるむくらいのインパクトだ。グループで虫採りをしていると、ビッグサイズのムカデをつかまえた人はその日のちょっとしたヒーローだ。噛みつかれても死にはしないが、痛いのはやっぱり誰でもイヤだもの。

だからしつこいようだが、踊り食いなんて狂気の沙汰なのである。

しかもこのおじいちゃん、死神を脅す度胸はあっても歯は1本しかない。

一体どうやってムカデを飲み込むのか。胃に入っていくプロセスを、想像するだに恐ろしい。
だってコレっすよ。おじいちゃんが召し上がっているものは。

いよいよ実食!
黒くて固いムカデの味わい

では“ムカデは食べられないのか?”というと、実はそんなことはなかった。

正確にはムカデは昆虫ではなく節足動物ムカデ網の総称なのだが、昔から「毒虫」として嫌われてきた。

そしてその毒を”逆に薬としてしまえ”という発想で、古くから利用されてきたという。

ムカデには解熱や新陳代謝促進効果があるとのことで、現在でも韓国の漢方市場では乾燥したものが束になって売られている。

まずはその市販品から試してみたい。

こんなん売ってました@韓国

※このテキストは『TRASH-UP!! Vol.11』にて発表したものです。
続きは本誌でお楽しみください!

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この記事を書いた人
ムシモアゼルギリコ

フリーライター歴20年(※虫関連の記事以外、基本は別名義)。
2008年頃から昆虫料理研究会(内山昭一主催)に参加し、“虫食いライター”としての活動を始める。
TV、ラジオ、雑誌、トークライブ等で昆虫食の魅力を広めているほか、映画やバラエティ番組などに登場する“虫食いシーン”の、調理サポート等も行う。

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